Destructured
Yutaka Yamauchi
留学のすすめ 29 Dec, 2016 filed in:
Business School もうすぐ年が終りますね。しかし1月には論文や本の締切が5本あって、これまでになくヤバい正月になりそうです。 先日学部生の方が海外に留学したいので話しをしたいということで来られました。21歳とのこと。海外に出て行ったときの自分が懐しいです。どんどん海外に行って欲しいと言いながら、微妙な話しをしてしまったので、勝手にもやもやした気持ちになってしまいました。MBAに行きたいというので、MBAはもはや価値がないという話しから始まり、研究者になるなら博士で留学するのがいいと言いつつ、でも研究者の道はシンドいので勧められないという話しをしていました。とにかく海外に行って欲しいと言いながら、どこが一番いいかと聞かれたので、自分は今ではLAもベイエリアも住んで仕事をしたいと思わないという話しになってしまいました(だからと言って京都に住みたいということではありません)。自分の言っていることを否定していることに気付きました。 なんでこういう話しになったのか… とにかく海外に出て欲しいと思いますが、それは海外に出ること自体にはそれほど意味がないことを理解するためであるというなんとも弁証法的な事実を気付かされました。当たり前のことですが、海外に出るとそこが一つの自分の場所となるので、次にはそこから別の場所に行きたいと思うようになります。コスモポリタンであるということも、それが当然のことですので(みんなそうなので)、何の価値もありません。もちろんそれが簡単であるという意味ではありません。だからこそ、海外に出て行って欲しいと思います。 とりあえず海外に行けと言いながら、今はとりあえず行くということが難しい時代です。昔のようにとりあえずMBAに行けばいいというようなことは通じなくなりました。自分の専門性を決めて、それに合った留学先を考えなければなりません。例えば、自分が博士課程で勉強したUCLAでは、MBAを減らしながら(FEMBAを拡充しつつ)、ファイナンスなどの専門性を持った修士課程(Master Program)を作ろうとしています。MBAができる前には専門的なMaster Programがあったわけですので、MBA以前に回帰しているわけです(ランキングにはよくありませんが)。そういう専門性を目的とした留学はかなり成果があるだろうなと思います。他には、自分の周りでヨーロッパにデザイン系で留学される方も多いです。 また、基本的には留学というのはお金をもらってするものであって、自分からお金を払ってするものではありません。米国の博士課程では大抵何らかの奨学金がついてきます。最低3年間は奨学金とRA/TA、それ以降は選抜がありますが別の奨学金があります。私も関わっていますが、UCLA Anderson(ビジネススクール)ではNozawa Fellowshipというのがあって、日本人留学生に特化した支援をしています(MBAでも出る数少ない奨学金です)。デンマークでは国の制度として博士課程(Ph.D. Fellow)には年間500万円ぐらいの支援があります(それが大学にとって足枷となっているのですが)。 また海外に行く別の方法として、企業インターンの制度は非常に重要です。私が学生だった10年ぐらい前なら、企業の研究所がインターンを受け入れてくれました。私は修士のときにフランスのXerox Research Centre Europe (XRCE)に、博士1年目からXerox PARCに行きました。日本にいると考えられないですが、米国のインターンはかなりの給料がもらえます。そのころで月5,000ドル程度はもらえました。これはGoogle、Intel、IBM、HP、Sun Microsystems(もうないですね)などでも同様でした。今ではもっと条件がいいだろうと想像します(ご存知の方は教えてください)。もちろんそれなりの専門性があってこそ受入れられるわけですが、学生なので基準はそれほど高くないです。ビザもサポートしてくれます。お金の問題はどうでもいいとして、重要な経験になります。私の博論の3分の2はPARCで書きました(学位を取る前にXeroxに就職してしまいましたので必ずしもインターンだけではありませんが)。またフランスで過した体験はその後の人生にとても強く影響しています… 加えて、今は自分が学生のころから考えるとうらやましいぐらい、交換留学や大学が支援する留学の仕組みが整っています。かなり多くの方々がこのような制度で留学されています。データを見たわけではありませんが、自分が学生のころよりも今の学生は積極的に海外に出ているように思います。この相談に来た学部生もそれを利用して、2カ国ぐらい行くらしいです。素晴しいですね。自分の博士課程の学生にもできるだけ海外に行くように支援したいと思います(すでに3カ国行っていて、来年は4カ国目です)。 とにかく海外に行って欲しいと思います。