Destructured
Yutaka Yamauchi

学生の受入れについて

最近研究室に来たいという学生さんをお断りすることが多くなってきました。せっかくアプローチしてきていただいているのにお断りするのは、お互いに気分のよいことではありませんので、その理由を一度明記しておきたいと思います。

これまでは博士に進みたいという方々は、ほぼ受入れてきました。しかしながら、それで数年間やってみて様々な問題が顕在化してきました。色々考えたのですが、当たり前のことが見えてきました。私のやっている研究が、内容的にも方法論的にも、そして根本的な視座の点からも、基本的には経営学ではメインストリームではなく、むしろそのメインストリームの研究を批判していく傾向があるということです。一方で、学生さんは本や雑誌を眺めて知っているメインストリームの経営学の内容を求めて来られます。

私も指導できなくはないだろうと思い、ひとまずは学生さんのやりたいことをやってもらって、私の視点でそれに何か面白いことを付加できればいい研究ができると考えていました。しかし、この後から付加するという部分が、学生さんがやりたいことの否定になることであったりします。私としては、そういう多面的な研究の方が面白いと思ってそういう指導をしてきたのですが、これが学生さんに苦悩を招く結果となることがわかってきました。

同時に私の研究はあまり評価されません(よくわからんことをしているという程度にしか見られません)。ということは、そうやって学生さんが研究をしたとしても、その結果が評価されにくいことになります。私は自分が重要だと思うことをやっていればいいと思いますし、それが自分の仕事のスタイルだと思っているのですが、そこまで理解していない学生さんに同じことを求めるのは正しくないということに気付きました。特に論文が通りにくいという致命的な問題、そして就職するときに自分の研究を理解されにくいことは、ほとんどの学生さんには抱えこめないリスクですが、そういう重要なことをこれまで気軽に考えすぎていました。反省しています。

そこで自分と同じ志向の学生さんだけに絞らなければならないという結論に達しました。同じ考えである必要はないのですが(同じ考えであればそもそも同じ志向ではないわけです)、リスクを取って同じような立ち位置を求めるような人ということです。結果的にほとんどの方をお断りしなければならない状況です。つまり、お断りした方々に問題があるわけではなく、私の方に許容するキャパがないというか、マッチングの問題です。ですので、他の教員とマッチングがあえば全く問題ないだろうと思います。

最後に、経営管理大学院の博士課程は必ずしも研究者養成を第一目的とはしていませんが、実際にはかなりの競争率になっているという状態で、受入教員として学者になりたいという方を優先したいという気持ちがあります。正直なところ、学位だけ取れればいいということですと、教員自身にとってメリットがないのです。教員が博士課程の学生に求めるのは、単に一方的に教えたいということではなく、自分の研究にゆさぶりをかけてその限界を乗り越えていくのを促してくれるような人材です。つまり博士の学位を取るということは、既存の博士を否定していく活動であるべきなのです。