Destructured
Yutaka Yamauchi

難波鉦 なにわどら

横山俊夫先生から『難波鉦』(なにわどら)をご恵贈いただきました。非売品ということで貴重なものです。これは江戸時代初期の大坂の遊廓での会話を綴ったものです。2冊目の「松之部 」の「釣針 たかま」から一つ抜粋。たかまという太夫の言葉です。

たかま「男が金持ちならば、好いてくれそうなのを見定めて、確かに女郎になじむとみらたら、初対面、二度目も気を持たせるようにしてふれば、せつながって続け買いにするものでございますよ。三度目ほどでしっぽりと会いますと、逃げないものでございます。ただ、それも一概にはいえません。見立てが大事でございます。男によってはしゃんとしたのが好きな人もいて、そういうひとはふらずに面白おかしくもてなし、二度ほども床に入らなければ、ひたひたと迫ってくるものでございます。また、艶っぽいのが好きな男には、はじめの二三度まではひたひたとしてみせ、四五度ほどで口舌のように仕掛けて、時には、一晩もつきあわないようにすれば、いろいろと鼻の下を伸ばしてのぼせあがるものでございます。あまり金を持たない粋の男でしたら、なるべく愛しがって初回からしっぽりとぬれてやるのが女郎の心映えでもありますし、また、よそへの評判もよくいってくれるものでございます。なじみになれば、大人気を得るためになります。また、金を持たない阿呆にもなおさら同じようにいたします。そういうのはのぼせ上がってたいへん喜びますので、金持ちよりも多く会いに来るものでございます。そうなると、金持ちの男たちが焦りまして、本当に女郎のためになります。金持ちがそれで焦りだしたとみましたら、そこで金持ちをとりとめるようにします。そうするうちに例の貧乏人は金が尽きますから、あとは心から金持ちに惚れたように思われて、その大臣も『自分のために男をふった』などといって、たいへんよいことがあるものでございます。とにかくよく見極めていれあげないのが大事でございます。」

江戸時代の遊廓というのは、闘いのサービスだったのですね。

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