Destructured
Yutaka Yamauchi

ビジネススクールの今後

ビジネススクールは今後20年間の間に4分の1ぐらいになるだろうというのが、イギリスの感覚です。多くのビジネススクールはMBAの授業料で運営していますが、MBAを取る人は年々少なくなっています。現在はそれを留学生(多くは中国の方々)によって埋め合わせているのが現状です。日本の大学はそもそもMBAの授業料では生計を立ててはいませんので状況は若干異なりますが、MBAの数は減っていく傾向は止めることができないでしょう。

一般的なMBAがそれほど役に立たないという意見は昔からあるのですが、私もそれに同感です。人々がMBAに求める知識なり経験というのは、もはや簡単に手に入る状態です。本屋で何冊か買って読んだり、企業の研修で多くのことが学べます。20年ぐらい前でしたら、米国ではMBAを取ると給料が5割ぐらい増えるという感覚でしたが、今ではどうでしょうか? 今後もMBAを取ろうとする方々の数は減っていくでしょう。

すでに経営のためのエリートを養成するという概念は古臭くなっています。最近では考える前に実行するというようなことが重要だとされています。デザイン思考のようなものを取り入れるのも一つのやり方ですが、すでに社会に十分普及してしまっていますので、無意味でしょう。大学に来て経営の基礎や応用を学ぶというのは、そもそもありえない話しですが、それがありえたのは近代という特殊な時代のためであって、経営学それ自体の力ではないのです。

そこで各ビジネススクールは専門性を持たせるような戦略を取ります。私が所属する京大のグループではサービスに特化したプログラムを6年前から始め、今年度からホスピタリティやツーリズムに拡大しています。これは社会からの要請が大きな領域ですし、戦略的には興味深いところです。これは今後かなり盛り上がると思います。原先生、若林直樹先生のリーダーシップのおかげです。

それと同時にMBAの教育自体がある程度変化していかなければならないと思います。私の個人的な感覚ですが、実践に近づくよりも、学術的な研究に近づいていかなければならないように多います。英国もデンマークも多くがそれを志向しています。経営学の最先端の知識は経営の実践にそれなりに役に立つのですが、それだけで2年間MBAに通うコストを正当化できるものではありません。大学が提供できて他にはできないものというと、学術的な研究しかありません。つまり様々な現象の前提にある微妙な差異を捉え、それを説得力のある形でうまく表現していくという力です。

ということで京都大学の経営管理大学院では、今年からMBAを減らして博士課程を作りました(上記は私が勝手に言っているだけで、必ずしもその理由ではありません)。いずれにしても地方の交通の便もよくない大学にわざわざ来られるわけですから、他と同じようなMBAでは意味がないと思います。