Destructured
Yutaka Yamauchi

Sabbatical

サバティカルのすすめ

明日帰国します。コペンハーゲンビジネススクール(CBS)での4ヶ月、実りの多いサバティカルでした。当初の目標は全て達成しましたが、そもそも期待をはるかに越える経験でした。日本では相談できる人もなかなかいないような研究をしているのですが、同じような興味を持って同じような志向で研究している多くの人とつながったことで、自分の研究の将来性がかなり変わりました。サバティカルという制度がなぜあるのかよくわかりました。その経験が参考になればと思いました。

まずサバティカルでの滞在先は安易に決めてはいけません。自分の知り合いがいるからということで決めてしまってはもったいないです。知り合いについてはすでにわかっていることも多いので、せっかく知見とネットワークを広げるのであれば、知らないところに行くべきでしょう。これは相手にとっても新しいネットワークを構築できるメリットがあるということです。ただしその上で、他の部局には知っている方々がいたり、知り合いの先生から別の部局の方を紹介いただいたりということが、知見を広げる助けになりました。

滞在先の決め方ですが、単に一人の著名な研究者がいるというだけではもったいないように思います。むしろ組織としてまとまってやっているところがいいでしょう。格段にネットワークが広がります。私の場合は似たような研究の志向をしている人がクリティカルマスを形成するぐらいの部局でしたので、これ以上ないというぐらいの最適な場所でした。

単に客として終わらないためには、先方にとってのメリットがある形である必要があります。まずは自分の研究で相手に刺激を与えるということが最重要で、その次に共同で論文を書けることが重要ですが、それ以外にもあると思います。例えば、日本との連携が研究費を取得するために重要であるかもしれません。

また、特に私のような中堅研究者の場合は、タイミングが大事です。ある程度業績がある段階だと、扱いが格段に違います。客ではなく同僚として扱ってくれますし、それによって構築できるネットワークの質も規模も異なってきます。つまり早すぎるのも難しいかなと思います。タイミングを選べないことも多いですが。若い人は機会があるならこのようなことを気にせず、ドンドン出ていって経験するのがいいと思います。

それから家族の生活です。私は失敗しました。最初は子供2人連れてくる予定が、安全のためということで1人だけとなり、それが問題でその1人の子供も帰国することになりました。結果的に家族にかなりの負担をかけました。最近は共働きが多いと思いますので、このような問題が重なります。子供にとってもかけがえのない経験ですが、学校は常に頭痛の種ですね。このような事情からあまり長期は難しいのですが、短期でも学校が受入れにくいので、3、4ヶ月が落とし所でしょうか。

あと個別にCBSがお薦めです。ヨーロッパ的な研究のスタイルを守ろうとし、それに成功している稀有な組織です(部局を選ぶ必要があります)。また、北欧の文化としてグループで集まり議論するという規範があることで、日々とても多様な議論に参加できました。最後に、CBSのような巨大な組織では、常にどこかの誰かが著名な研究者を世界中から招聘し講演会を設定しますので、それを周るだけでも刺激になります。その他にも、滞在するハウジングが整っていること、コペンハーゲンが住みやすい町であること、素晴しいレストランが多いことなど色々な理由があります。

とは言うものの、これは私が考えて経験したことですので、他のスタイルもあるかと思います。CBSでたまたまお会いした東京の大学の先生は、あるテーマに絞ってヨーロッパ中の複数の拠点を転々と滞在されていました。あまり真似のできないことです。

さて、帰国して1月からシンガポールです。それも楽しみです。